ガールズ&パンツァー最終章第3話ネタバレ感想

公開初日と2日後の日曜日で2回ほど観てきた。ありきたりの感想くらいしか抱けない凡人に大したことは書けないし、記憶違いの誤りもあるかもしれないし、すでにさんざん言われていることもあるかもしれないし、ツイッターなどを探せばもっと技術や歴史に詳しい方が適切に解説をしていると思われる。この記事で絶対に期待などしてはならない。ネタバレ以上に解釈違いもなかなか怖いところである。私は幻覚を見ているのかもしれない。そのあたりを承知していただける場合のみ下へお進みください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・今回は事前に言われていたように戦車戦の充実具合が半端ではなかった。ある意味では劇場版と並んでガルパン未経験者への入門にもっとも最適と(暴論だが)言えてしまいそうなほど圧倒的で、登場する人々だけでなく戦車そのものがガールズ&パンツァーを構成する重要なキャラクターであるということを如実に裏付けているような、驚愕するほかない密度、濃度だった。第1話や第2話に比べて人物としてのキャラクターの掘り下げはもしかしたら控えめだったかもしれない。だが、キャラクターとしての戦車へ重振りしたのだ。だから、こんなものを見せられたら離れられなくなってしまうに決まっている。自分が離れかけていたとは思わないが、それを思わず弁明したくなる。ただひたすらに面白い。本当にすごい。

 

・知波単戦後半で特にグッと来たのは、まず、撃破されたことを心配する玉田に対して名倉が「こっちに構うな!」と応じる場面。最初単純にタメ口を使っているところに関係性が垣間見えてエモさを感じたけど、考えてみると、これまでの知波単であれば情に流されて反攻の突撃をしてしまいそうなものだったのに、あくまで名倉は勝利のために前を向けと言えるようになっているし、玉田もそれに応えられるようになっているわけで、それが闇雲に突撃しないという後々のセリフにもよく表れている。西さんたちが玉田の突撃方向に誘導するために砲撃を仕掛けているあたりも含め、知波単全体の底上げと成長を象徴するシーンだと思う。

・次に、細見がⅣ号に撃破された場面。製作者側がどれだけ意識していたかはわかりかねるけれども、西住小次郎の名を世に伝えようとしたのが細見惟雄であったということを考えれば、どことなく粋な演出という気がしないでもない。

・あと、バレー部との交戦後の福田の表情もよかった。そのうち知波単を背負って立つ後継者としての片鱗が存分に感じられて末恐ろしすぎる。きっといい隊長になる。

・底上げという文脈で言えば、打倒あんこうを達したのが隊長の西さんではなく玉田というのも絶妙である(もともと月刊戦車道の別冊では注目選手に挙げられていたほどの人物ではある)。性格的に西さんや細見とは違った意味で後輩から慕われそうだし、後進の育成に才を発揮するのではないだろうか。元ネタの人から考えてもそういうポジションになりそうな気がする。あと個人的な解釈として、今後の知波単でいちばん撤退戦術に味を占めそうなのは実は玉田みたいなタイプであろうと思っている。いや知らんけど。

・負け方も知波単らしかった。変化や成長は喜ばしいことだけど急に変わりすぎてしまうのもどこか寂しいというか切なくなりそうだったので、最後の最後にやっぱり知波単は知波単だなあという場面を出してきてくれたのはむしろ展望を明るくさせてくれたと思う。試合が白熱してゆくにしたがって途中から最終目標がすりかわり、それでいてⅣ号の撃破を実際やってのけてしまう。そりゃ嬉しいだろうし、ああなっちゃうよね。しょうがねえって、あれは。このへんは(どこまで狙っていたのか知らないが)まずあんこうから仕留めた継続との対比になっている。

・大洗側にも見どころがたくさんあったけど、やはりあんこうチームのスイッチが特に心にぶっ刺さった。視力が高くて夜に強い麻子の力を最大限に活かすために優花里が操縦手に、みほが装填手に移り、しかもスムーズかつ自然にこなせている。TVシリーズ最初期に役職の不適性を乗り越えてから適材適所でずっと進んできた5人がまた別の可能性を見せる場面はひときわ感慨深いように思われる。

・それにしてもあんこうチームが強すぎるので、後進の育成という観点では大洗はまだうまくいってないようにすら見えてしまう。もちろんウサギさんチームたちも成長を見せてはいるけれど、知波単をはじめとした他校の調子と比べると若干差があるように感じなくもない。そういう意味でも第4話での大洗勢の奮戦が楽しみ。早く見せて……。

・それからずっと個人的に気になっていたのは、製作者側は映画『南の島に雪が降る』(1961年)を多少なりとも意識しているのではないかなあということ。昨年の夏に発売したDVDを買って鑑賞してみたとき、劇中で「酋長の娘」を歌うシーンがあった。これは当然「知波単のラバさん」の元ネタなので深く考えるまでもなく安易につながりの推測になるわけだけども、一方この歌はドリフターズなど相当数の歌手にカバーされていることもあって確信まではできなかった。ところが今回の第3話、試合後に知波単の汽車が映るシーン(予告映像にも出ていた)で雪が降っているのを見て再度「やっぱ意識してるんじゃね?」という方向に傾いた。もちろん劇中の季節は冬だから降雪自体はむしろ自然なものではあるけど、第2話でウサギさんチームが蒸し暑くて汗が出るやら虫に刺されるやら会話していたことを考えれば試合の舞台となっている熱帯と思しきジャングルのような環境で雪が降る光景は特殊な状況であるはずなので。というかもう願望込みで、確かに古いには古いけれど、名優加東大介が自らの実体験をもとに執筆し自ら主演し、戦地の苦しみと悲哀を描きながらも心地よい(イマドキもう完全に忘れ去られた類の)ヒューマニズムを貫徹した人情喜劇のかの傑作映画が、どれだけ間接的であっても現代のアニメとリンクしているのだとしたら、なんとなく面白いというか嬉しいことだなあと思っている次第である。いや、確信はないのだが……。

・それともうひとつこれは余談。BGMや他の歌にも言えそうなことだが、現代の価値感に必ずしもそぐわない歌詞を含む「酋長の娘」の知波単らしい歌へのアレンジは、兵器としての戦車という価値観にとらわれず、別の側面からその奥深さと魅力を知らしめてくれたガルパンという作品の精神の一派生であるように感じられた。まあこれはちょっと考えすぎというか、肯定的に捉えすぎている自覚もある。

・本編に直接関係してこないところだと知波単生全員のフルネームが公開されたのは、非常に嬉しいことだった。玉田環!

・そういえば大洗の三年生の本名もさりげに公開されていた。自動車部の三人のはそれほど驚かなかったけど日吉葵はイメージからかけ離れすぎていて(というかこれまで予測しようがなかったので)ぶったまげた……。

・「アズミおねえさま、ひっどーい!」……。

 

・2回戦の他の試合も見ごたえがあった。公開前、ポスターにおける各校の隊長(みほだけ違うけど)の並び方に対して「右が敗北で左が勝利なんじゃないか」みたいなことを言ってるツイートを見かけたおかげで余計な心配をしていたけど、だいたい予想と願望通りの成り行きになったように思われる。

・まずはなんと言っても逸見エリカ。自分に隊長が務まるかどうか不安がったり、まほを(悪い意味で)ばりばり意識しているように見えたり、正直かなり心配せずにはいられなかった。それがどうだろう。高地に陣取るプラウダに押されて表情も影がちになったかと思えば、まほのアドバイスを思い出すことで覚醒、戦車を飛び越え飛び越え勝手知ったる相棒のもとへ帰るシーンはまさにみほを彷彿とさせるではないか。さらにいちいちポーズをとりながら号令をかけ、勝利が決まった瞬間に感情を爆発させて喜ぶエリカを見て、ちょっと泣きそうになってしまった。というのも、私が初めて書いた同人誌が、まさにエリカがどうやって自分の戦車道を見つけようとするかという小説だったので……。当然自分が勝手に甘い詰め方で空想した産物など比べ物にしてはいけないのだけど、どれだけ内容を違えていても公式的にそういう描写を出してもらえて感無量である。エリカは試合後もしかしたらOGやコーチなどに怒られるかもしれないけど、後悔はないだろうし、いい表情をしているはず。家元もおそらくうるさく言わない(言えない)だろうし、むしろ間接的にであれ味方になってくれるかもしれない。ない?

アンツィオと聖グロは本当に怖かった。どちらも好きな学校だけれど贔屓といえば後者だもんで、負けたらどうしようという疑心暗鬼が最後までずっと拭えなかった。試合前もカバさんチームのやりとりがフリになっているようにも見え、さらにオレンジペコもアッサムもダージリンもボロクソひどいことを言うのでフラグかと思わせるところがあったし(ちなみにアンチョビも別路線でだいぶひどいことを言う)。ともあれ結果的に聖グロが勝ったおかげで一安心。これは完全に結果論的な話でしかないけど、していい油断としてはいけない油断があって、負けるチームはみんなしてはいけないところで油断してしまっている。そのへん聖グロも口では手ごたえがないだのデータが集まらないだの言いつつ相手の動きを察知し、対応し、誘導し、最後に確実に仕留めるという勝利の手順を描けていたようには見える。ただまあ、またしてもルクリリのセリフがなかったのが少しだけ残念かも。

・サンダースと継続の試合はなんと言っても新キャラ(おそらくあの高名な狙撃手が元ネタ)の出現で継続が勝利するところだろうが、私はそれ以上にナオミの悔しそうな表情がごちそうさまでした。「あと1輌は?」と、彼女だけは勘づいていたわけだし、なにより高校No.1と称され、少なからずその自負があるであろう自分の目の前で、あんな狙撃を決められてしまって、悔しくないはずがない。「あんなことができるやつがいるなんて・・・」という未知に対する驚愕が、あるいは「こんなことができるのは、もしかして・・・」みたいな心当たりが、なにかしらあるのかもしれない。継続の「白い魔女」ヨウコについては本編でのわずかな描写とパンフレット記載の補足情報以外ではその搭乗車すらよくわかっていないのだから悩んだところで仕方ないとはいえ(寡黙で真面目らしいがミカに融通がきかないところがあるとまで言われるキャラは相当なもんだと予想される)、いきなり出てきたのか、前から噂があったとか、昔は有名だったがどこに行ったかわからなくなっていたとか、いろいろ妄想せずにはいられない。

・ところでルミとメグミが母校の試合を観戦するワンシーンがあったけれど、なんだかあれはすごくよかったな。シガーレス。(saku)さんとこの同人誌「今すぐここでキスして」を思い出した。あと前から勝手にメグミが大食いだと信じていたのだけど、でっかいチキンを食べていたので解釈を助けられた気がしている。牽強付会という。幻覚だったかもしれない。

・結果的に準決勝は大洗vs継続と黒森峰vs聖グロという取り合わせになった。1回戦のBC自由学園や2回戦の知波単学園のように、これまで大洗と戦ったことがないチームが最終章で前面に出てきているというメタ読みから継続が出てくるのはまあまあ予想できたし、右ブロックもみほがかつて在籍した黒森峰と大洗がまだ一度も勝っていない聖グロが上がってくるというのは因縁というか「重み」の観点からしても順当と言えそうではある(とはいえ2回戦に敗けてほしいチームなどいなかったのだけど)。だからこそ、そのあたりが現物として提示されて余計に今後の展開の予測が難しくなった感も強い。すでに戦力はしっかり削られながらも司令塔とエース狙撃手を残している継続に対し、絶対的支柱あんこうだけがいなくなった大洗がどのように戦うのか。また、一皮むけたエリカ率いる黒森峰か、夏の大会の雪辱を期す聖グロリアーナか、楽しみなことこの上ない。本編後の特報で第4話を鋭意製作中とのことだったので、以前よりは待たなくてすむかなとわりと楽観視している。まあ待つこと自体はそれほど苦にはしてないので、とにもかくにもクオリティの向上を期待していきたいところである。そのうえでもし願えるなら満足度の高い解釈の一致をば。

・そういえば試合の合間にちょこちょこ顔を出す観戦ポジションは知波単とアンツィオの面々になりそうだけど、前の試合に引き続きBC勢、それから出番が少なめのサンダースやプラウダの生徒たちにもどしどし出番を与えてもらいたい。あるいは劇場版のサンダースのように試合外のところで存在感を見せてくれるような場面があればなおも嬉しい。

・継続高校の学園艦の雰囲気、とても好きである。うまいうまい言いながらはしゃいでいるミッコも、雪だるま作りに気が進まなさそうでありながらも「食べる!」と即答するアキも、チューリップハットを雪だるまにかぶせて自分はサンタの恰好をしているミカも、短い時間でわずかながらだけどきちんと新たに掘り下げがなされていたんではないかと思う。もちろんヨウコも含めてもっと描写してもらいたいのはやまやまではあるけれど、とにかく今後の展開と一緒にもろもろ期待することしかできない。

 

・それにしても、全6話予定とされている最終章がいよいよ折り返し地点に差しかかって、終わりが見えるような見えないような、不思議な気持ちになる。

・今後の展開に関してまったく予測がつかないことは上でもさんざん書いているけど、残るところだと愛里寿の進路あたりだろうか。敗者復活のような制度もなさそうだし、劇場版のような合同チームが再び結成される筋書きもないとするならば、準決勝に出ている高校のどこかに加わる可能性がやはり大きいだろう。もう試合を開始している継続にいるとは考えにくく(「島田ミカ」のような俗説は面白いがここではなかろう)、そうすると黒森峰か聖グロリアーナしかないが、じゃあそのふたつならどっちなんだとなるとこれもまた難しい。最終章がまるきり無限軌道杯で終始するという仮定のもと、開催期間中に編入した生徒が大会に出場可能かどうかというレギュレーションの面で問題がないとすれば決勝でどこかに合流するという展開はありうるにしても、どちらが勝利しそうかという問題やそもそも愛里寿がどこに行きたがるかという問題に直面する。

・このへんの個人的な願望を含んだ妄想を記すと、聖グロリアーナが比較的ありそうな気がしている。愛里寿が乗っていたのがセンチュリオン、つまりイギリス戦車であり(ちなみにダージリンの好きな戦車も一応センチュリオンである)、仮に聖グロOG会の派閥争いの設定を公式的に踏襲するとして、もしダージリンがこの状況を打破して新しい戦車の導入を進めたがっているのであれば愛里寿の存在をその鍵として考えることがありえそうだからである。他方、黒森峰に編入する可能性が薄いかといえばそうでもないと思う。もちろん上記のような推測のための材料や背景はぱっと思いつかないし(私が無知すぎるゆえ)、隊長のエリカが愛里寿の編入を前向きに受け入れるかどうかを考えるとかなり微妙なようにも感じられるのだが、前話でも河嶋家の家族構成の設定変更などで我々視聴者は何度も裏切られてきたことを考えれば、どこかしら思ってもない筋とつなげたり新たな文脈を創作してしまったり、いくらでもやりようはあるわけである。例えばコミックアンソロジーのSIDE:大学選抜に掲載されたPennelさんの漫画のように、意外とエリカと愛里寿のウマは合うかもしれない。こんなこと考えても仕方ないのだが、考えずにはいられない。すべてが無駄であるとしても……。

・後半3話における残り試合に対する尺の配分も気になるところであるが、ともあれ一話一話の時間が大幅に変動することはまずないと思うし、時間が経てば情報の整理や取捨選択もできてくると思うので、ほどほどの緊張感と期待を抱きながら過ごしていくようにしたい。

 

・結論。めちゃくちゃ面白かった……長らくあれだけ避けてきた「ガルパンはいいぞ」という言葉を漏らすしかないほどに……。再び、劇場へ急ごう……。

 

 

 

・最後。これはもう本編と全く関係のないことなのだが、もともと知波単で一作くらい書いておきたいなとしばらく考えていて2021年中くらいを目途にそれを形にするつもりだったのだけど、少なくとも半分は知波単メインになってくる第3話が公開された後なんて絶対に他にクオリティの高い作品が雨後の筍のようにぽんぽん生えてくるに決まってくるだろうと察せられてからは完全に気が引けてしまい、結局またしばらく温め直そうと決めたのが1月の半ばのことだった。じゃあそれとは別にどうしようかとずっと考えていたのだが……なんもわからん……なんらかのなんらかに申し込んでもう1ヶ月以上経つはずなのだが……なんも……なんもわからん……。